三上 美海

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入学して一週間。 少しずつ新生活にも慣れてきて、ヒマ以外に気の合うクラス女子も増えてきた。 自称、低血圧のヒマはいつもギリギリ登校。 だから朝のホームルーム前のその時間、私は大抵クラスの仲いい子たち三人くらいで集まって、談笑なんかをして過ごしていた。 「ねぇねぇ、もう部活どこにするか決めた?」 聞かれて答える。 「え、まだ」 「じゃあ今日テニス部の見学一緒に行ってみない?」 「えっ? テニス? 無理だよ、私経験ないし。 そんな体力もないもん」 慌てて断ったけれど、相手は引かない。 「私も初心者だよ? でも運動しないと太りそうだしさ。 顧問の先生も先輩たちもあんまり厳しくないって聞いたんだ。 行くだけ行ってみようよ?」 確かに中学時代も運動とは無縁の美術部だったもんな。 特にやりたいこともないけれど、だからって帰って寝るだけの生活というのも虚しいような。 充実した高校生活を目ざすのなら、部活で汗を流すことだって必要なのかもしれない。 思案していたら、隣から身を乗りだしてくる友人が。 「えー、それって目黒君を見たいからじゃないの? テニスコートってサッカーゴールのフェンスの裏でしょ?」 サッカーゴールの裏? そうなの? テニス! ありかも! でも目黒君って? 「誰?」 もしかして入学式の日に見つけた、あの方ではないよね? 「え~っ! 知らないの? 超有名人だよ? 中学違ったけど、うちらの周りじゃ知らない子いなかったよ?」
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