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「ふぅん。 そうなの? 誰?」
夕食後、部屋にこもって一人。 日記アプリに書いた文字をながめる私の耳へ、ふいに飛び込んできた声。 思わずベッドからずり落ちた。
「はっ! ユウ? いつからここに?」
「さっきから」
ベッド上の相手は、しれっとした顔で私を見おろしてくるけれど、こちらは事態がのみこめず余計に焦るばかり。
「ち、ちょっと待って、どこから入ってきたの?」
「そこから」
でしょうね! 部屋の入口なんて一つしかないしねっ!
悪びれることもなく背後のドアを指さす相手に対し、驚きはすぐさま怒りへと変わる。
「勝手に入ってきて、のぞき見たの? 後ろから? 人のスマホを?」
「うん」
素直にうなずかれ、煮えくりかえる私のはらわた。 手にした枕を振りあげる。
「うん、じゃないよね? どうしてそんなことするのよ! バカッ!」
投げつけた枕が顔面に命中しても、相手の心はまったく折れなかった。 乱れた前髪の奥でらんらんと輝く、興味津々の大きな瞳。
「だって気になるから。 ねぇどんな奴なの? どんな気持ち? どうして実らないの?」
頭にきすぎて理性が吹きとぶ。 髪を振り乱しながら怒鳴りつけていた。
「うわぁぁぁ、もうやだ! 出て行ってよ! 早く!」
ヘッドボードに並べられたぬいぐるみを次々と投げつけ、部屋の外へ追い払ったあと、逃げ去る相手の背中に向け叫んだ。
「帰れ! そして二度と、人の部屋に来るな! ユウなんて大っ嫌い!」
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