三上 美海

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「ねぇねぇ、このクラスの担任ってさ! 誰かに似てると思わない?」 新学期がはじまって初日の教室。 突然、後ろの席の子に話しかけられた。 振り向くと、そこには頭を抱え苦悶する美人の姿が。 「ずっと考えてるんだけど名前が思い出せなくて。 今すっごく気持ち悪いんだよね。 え~と何だっけ? 名前。 芸人の……うーん、昨日も深夜のお笑い番組に出てた、えっと」 「あ、モリモン?」 さっき自己紹介を終え教室から出ていった教師の顔を思い出しながら、私は答える。 最初に見た時に一瞬自分でも思ったけれど、けっこうマニア受けタイプの芸人だから知っている人なんていないと思っていた。   「そうっ! それだ! モリモン!」 相手は目鼻立ちのはっきりとした顔を、くしゃくしゃにして笑った。 長いストレートの黒髪が揺れ、美少女ぶりが更に増す。 「あー、ありがとう! すっきりした! もしかしてお笑い好きの人?」 そんなふうに聞かれ、なぜか芸人の話題で盛りあがりはじめる。 やっぱりエビ飯よりピンぽんズだよね? あのリズム芸に勝るコンビはいない! と、更に意気投合。 「私、川嶋ひまり! 向日葵って書いて〝ひまり〟って読むの! よろしくね!」 名前のとおり太陽の花みたいに、綺麗で明るくて元気な子だな。 こんな人と入学早々仲良くなれるなんて、私、お笑い好きで本当によかった! 自分の趣味に感謝した日。
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