おると小さな祭り

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ボクはおる。 そう、「おる」という名前。 ヨークシャーテリアで、11歳だ。 ボクは港のある小さな街で、人間のお父さん、お母さん、飼い主である姉ちゃんと戸建てに住んでる。 風に夏の生ぬるさと、ウマオイのキィキィした鳴き声の高周波がミックスした夜が続いたころ、夏祭りの日がやってきたのに気がついた。日が暮れてから、お母さんたちが着替えをしだしたからね。 そう、チラシが入ってたんだよ最近。 会場は、メインのとこが徒歩15分くらいの空き地。 日が暮れてからの カラオケ会場で、シリアルナンバーの入ったこのチラシを持って行くと、抽選で、色々なものがもらえる催し物もあるらしいって書いてあった。 へえ、と思ってたら、姉ちゃんが言ったんだ。 「ね、おるも連れていこうよ。」 「いいけど、おるもなの?」 お母さんはしぶしぶだけど、どうやらボクも行けそうだと思ってはいたよ。 姉ちゃんの目論見は知ってんだ。見せたいんだろ、みんなにボクを。 お散歩に行く事の、滅多にないボク。 ちょっとね、左足が生まれつき悪いんだ。 コンクリートやアスファルトの上を歩くのが苦手。     
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