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「ケガなんか気にしないって言うならほら、本に血がついてたら、後に読む人がびっくりする」
血なんか出ないのは知っている。
迷惑をかけるわけにはいかないと、とっさに手を振って断ろうとした。
星野の目のいろが変わった。
「それ……」
傷口を見ている。
さっと、無いはずの血の気が引いた。
紙で切れた指先は、ひび割れのように黒い割れ目となっている。
生きて、いないから。
伸ばされた手から、急いで隠す。
「もしかして」
星野の声に、総毛立つような感覚におそわれた。
席を立つ。
彼が何か言うのも聞かず、逃げるように駆け出した。
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