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   一人、入口をくぐる。  薄暗い本棚の間を歩けば、少し安心した。並ぶ本は、自分など見ない。ただ整然と前を向いている。  慣れた場所まで行き、あの幻想物語の続きを手にして、足が止まった。  いつもの席に、星野が居たら。  どうすればいいか分からない。本棚の間からでは、あの席は見えない。  おろおろと歩いた後、本棚の間を抜けて、いくつか入口のならぶ廊下を見つけた。  吹き抜けに面した廊下は、来たことが無い所だ。  ドアの無い入口はどれも同じようで、見つかる前にと、近くの1つへ入った。  中は、小さな本や薄い大きな本が、かんたんな金属の棚へ並ぶ、狭い部屋だった。  低い天井へ届きそうな棚は、部屋いっぱいに並んでいる。  そして、誰も居ない。  つきあたりの窓際に長い机があり、いちばん奥の端へ、本が山積みになっていた。  乱雑なその様子は、ただ片付けられていないだけに見える。  あそこなら、見つからずに過ごせそうだ。  山の近くに座って、本を開いた。  久しぶりに読む物語は、幾度も続きを夢想したはずなのに、少し戻らないとストーリーが分からなくなっている。  結局、持ってきた巻のはじめから読み直すうちに、物語へ没頭していた。  
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