9/14
前へ
/48ページ
次へ
  †††††  ソファーでのうたた寝から覚めると、主が居た。あたりは暗く、静かだ。  今日の出来事や読んだものの事を話すと、主は黙ったまま目を閉じた。  最近、機嫌が悪い。  夜に寄り添い、夜こそ美しく気高い主だが、図書館での話をする度に、黙って足元の影を睨んでいる。  毎夜、主が居るようになったことは良いのだけれど。  元より恐ろしいほど整った顔が、尖った表情をしているものだから、やがて言葉はしぼんでいく。 「……何か、いけない事をしましたか」  思い切って尋ねてみると、暗い色を残した眼が向く。目が合うと、たちまちそれは和らいだ。 「いけない事などあるものか」 「でも」  口が塞がれた。  間近で主が深く笑む。 「遥霞が私の許へ居る。それで良い」  そして頬からゆっくりと、様子を確かめるように触れ、前より時間と手間をかけて処置に耽る。  僕が死なない為の。 ††††† 
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加