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ソファーでのうたた寝から覚めると、主が居た。あたりは暗く、静かだ。
今日の出来事や読んだものの事を話すと、主は黙ったまま目を閉じた。
最近、機嫌が悪い。
夜に寄り添い、夜こそ美しく気高い主だが、図書館での話をする度に、黙って足元の影を睨んでいる。
毎夜、主が居るようになったことは良いのだけれど。
元より恐ろしいほど整った顔が、尖った表情をしているものだから、やがて言葉はしぼんでいく。
「……何か、いけない事をしましたか」
思い切って尋ねてみると、暗い色を残した眼が向く。目が合うと、たちまちそれは和らいだ。
「いけない事などあるものか」
「でも」
口が塞がれた。
間近で主が深く笑む。
「遥霞が私の許へ居る。それで良い」
そして頬からゆっくりと、様子を確かめるように触れ、前より時間と手間をかけて処置に耽る。
僕が死なない為の。
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