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「……藍子、どうしたの?」
向かいに座っている友達のめぐみに話しかけられて、藍子は我に返った。
「ううん、何でもない」
藍子は慌てて首を横に振った。
めぐみは藍子の心の中の声が聞こえる体質のことを知らない。藍子は友達のめぐみだけでなく、家族を含めてほとんどの人間に自分の特殊な体質のことを話していなかった。
「藍子ってば、また『どこかへ行ってしまった』みたいな表情してたよ!」
めぐみは少し心配そうに言った。
めぐみは藍子が今みたいに悲しい気持ちになっていると、良く『藍子がどこかへ行ってしまった』という表現をする。
「やだ、本当に大丈夫だよ」
「本当に? ……あっ、もしかして、藍子もあっちが気になるとか? ドアの向こうに絶対『いる』の! さっきから寒気がして……」
めぐみがドアを指さしながら大きな声で言うと、近くに座っている客が驚いた表情でめぐみの方を見た。
「違うよ、私、めぐみみたいに霊感は強くないもん」
藍子は慌てて首を横に振った。
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