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めぐみの『いる』というのは、幽霊のことだ。
めぐみは霊感が強く、他人の心の中の声が聞こえる藍子にさえも見えない「何か」が見えるらしい。
めぐみは裏表がなく、言いたいことはハッキリと言うタイプの性格で、霊感が強いことも包み隠さず話すような女の子だった。
藍子は自分とはまったく違う性格のめぐみのことを頼りにしているし、好ましく思っている。二人は性格がまったく違うが仲が良く、今みたいに向かい合って座っていると、何時間でもおしゃべりを続けられるような間柄だった。
ただ、客がびっくりしてめぐみを見たのは、めぐみの大きな声や霊感の話だけではないだろう。
めぐみはブリーチした髪の毛先をピンク色に染め、白地にイチゴ柄のワンピースを着ている。瞳の色もカラーコンタクトでピンク色、まるで外国のお人形みたいだ。
めぐみの姿はバーの暗い照明の中でもひときわ目立っている。真っ黒な髪に真っ黒な瞳、紺地に細かい花柄模様のシャツワンピースを着ている藍子とはまったく対照的だった。
「あっ、そうだった」
めぐみは照れたように、チラッと舌を出した。
「うん、私、霊感はないんだよね。幽霊とかそういうのは信じてるけど。占いやってるし」
「占いのバイト始めて2か月くらいだっけ? 藍子すごいじゃん! もう売れっ子みたいになってて。今度、私のバイト先の娘、連れてくるね」
「うん、ありがとう。――そう言えば、めぐみ、友達から連絡来た?」
「まだー! そろそろだと思うけど……」
めぐみは別の友達と会う約束をしていたが、会う前に時間が出来たので、藍子のバイト先の様子をわざわざ見に来てくれたのだった。
めぐみの友達はバーの近くに着いたら連絡するとのことだったが、仕事が押しているらしく、なかなか連絡が来なかった。
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