4.If You Needed Someone

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4.If You Needed Someone

 翌日、藍子がバイトへ行くために占いサロンの最寄りのN駅の改札口をくぐっていると、聞きなれた声が藍子を呼び止めた。 「――藍子!」  片手を挙げながら駆け寄ってきたのは、藍子の友達のめぐみだった。  めぐみは黒地に一面、メープルシロップをたっぷりかけたホットケーキ柄がプリントされたワンピースを着ている。  改札口近くにいた中年の男女がびっくりした表情でめぐみの服装やピンク色の髪を二度見したが、めぐみは気に留める様子もなかった。 「めぐみ、おはよう! めぐみもこれからバイト?」 「うん。――それよりも藍子、友達助けてくれて、ありがとうね」  藍子は龍司と初めて会った時に助けた、めぐみの友達のことを思い出した。  自分たちが助けた後に警察に連れられて病院へ行ったが、そこからめぐみの友達がどうなったのかわからない。あの()は大丈夫だったのだろうか。 「ううん、偶然だったし……。あの()、大丈夫だった?」 「大丈夫! 今日から仕事に行ったって。そうそう、友達が藍子に直接お礼がしたいって言ってたよ」 「そんな、お礼なんて……」  藍子はめぐみの友達がその後も無事だったことを聞いて、やっぱりあの()を助けて良かった、と思った。  めぐみの友達がビルの中に閉じ込められているとわかった時、龍司に心の中の声が聞こえることがバレることを恐れて、助けようかどうか迷った。  あの時、自分の素性を隠すことを優先していたら、めぐみの友達も救えなかったし、まさか龍司が自分の特殊な体質のことを知っている人間だった、ということにも気付かなかっただろう。 「そうだ! 友達が男の人も一緒に助けてくれたって言ってた。その人にもお礼がしたいって言ってたけど、誰? あのバーのマスターの人?」 「ううん、久住さんじゃなくて……」  と、藍子が言いかけた時、ふいに後ろから声をかけられた。  藍子が振り返ってみると、後ろに龍司が立っている。時刻表が貼ってある大きな柱に手を掛けて笑顔を見せていた。 「天尾さん……」  藍子は驚いて、思わず声を上げた。 「わあー、こんにちは! この間、バーにいた方ですよね?」  めぐみが嬉しそうな表情をしながら、龍司に声を掛けた。龍司はめぐみの方を向くと、笑顔で頷いた。
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