茄子漬けと恋

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あんなに心の中でニヤニヤしながら、 吾妻君を目で追っていたのに、何だか目で追えなくなっている私。 損してるじゃねぇか! 会話したことにより、損してるじゃねぇか! 自意識過剰であれ、という話なんだけども、 何だか吾妻君が私のことを目で追っているような気がする。 いや事実であれ! ……いや結局私も吾妻君を目で追ってるから、 気付けているんじゃん! そんな私はクラスに馴染めなかった同盟のメンバーと、 他愛もない会話が彩るお弁当タイム。 誰も本心で話すことは無い、戦時中の同盟。 まあ誰も戦争起こすほどの攻撃性は無いけども。 私は生温い湿り気のようなメンバーでキャッキャ、 もとい、ネキャッキャしていると、後ろから自信に満ち溢れた女子の声が。 「北川、アンタ昨日、吾妻君と何か話してたでしょ」 大将……ネチネチの大将、どこからか私のこと見ていたんですか、 私のこと好きですねー、ラインでも交換してあげましょーかー。 「調子乗るんじゃねぇぞ」 マジっすか、 あれ、ネチネチの大将ってあれですか、一学年上ですか、 先輩レベルの威圧ですね。 昨日は吾妻君の一言で心がキュンとしたけども、 今日はネチネチの大将の一言で心がグンとしたところで、さらに追い打ちが。 「オマエレベルが吾妻君と会話していいはずねぇから」 この言葉の重さは漬物石ほどだ。 今日のお弁当に入っていた漬物を残してしまうほどの、重さだった。 もう私……漬物を食べること出来ないかもしれないな……と、 なんとか今のつらさを、漬物になすりつけて、 茄子漬けになすりつけて、記憶を改ざんさせて、 ひっそりと生きていくしかない。
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