ペンギンの世界

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 我らは今同じ風景を違う高さで見ているのである。 所長は今、何を考えているのだろうか。 こういう疑問を持つようになったことも、或いはバベルの塔が世界にもたらしたものであるのかもしれない。 理解は世界を広げ、同時に新たな疑問を生む。 疑問は理解を求める。 言語を巡る連鎖が繋がり背中が少し泡立った。 「所長、いつまでも休んでないで仕事してください! あと、面白い結果が出たので一号さん一緒にきてくださいね」 「ははは、素直に一緒に話したいと言えばよいではないか、成瀬くん! では行こうか、一号!」 「りょりょー」(今行く)  テントの中から成瀬女史の声が聞こえた。 きっと次の仕事であろう。 次は何をするのか、大変興味深い。 我は首を伸ばしながらテントの奥へと歩を急がせた。 床に敷かれた断熱タイルがパタパタと音を立てた。 End
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