ペンギンの世界

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 身体の構造上、我が種族は陸歩きには向いていない。 鳥類のように飛ぶことは出来ず、おまけに脚が短い。 水中に入ればまた違うのだが、今は別にたいして役に立たない張り合いをする必要はないだろう。  我は平らな手で腹の横の地面を打ち付け、そりの要領で前進していった。 腹部の毛はつるつるとしており、雪との間の摩擦が少ない。 多少の力で押してやれば少ない力で簡単に移動できる素晴らしい移動方法である。 これをトボガンという。 我々の種族の典型的で高度な移動方法である。  半時ほど経ち、観測拠点にたどり着く頃には雲は厚くなり、降り出した雪が吹雪になっていた。  バイカル湖の遺物を探索するための観測拠点はバイカル湖のほぼ中央に位置するところにある。 観測拠点のテントは一つのみである。 バイカル湖には数多くの遺物調査事務所が参入しているが湖自体が広大であるが故、滅多に他の事務所の連中と遭遇することがないのだ。
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