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広大な自然の中にある小さな観測拠点の使い古された迷彩柄のテントの表面は今にも吹雪によって飛ばされそうな様子ではためいている。
風前の灯火といった風体であるが、不思議なことに二ヶ月以上もこの状態で耐えている。
テントの脇には断末魔のような轟音を立てながら発電機が振動している。
人間は毛皮を持たないがこういう人工物を生み出す能力に長けていると感心しながらテントに入った。
テントの中はさながら狭い洞窟の様相である。大きな機械が不健康そうな回転音を立てながらほとんどの空間を埋めている。
我が上司である成瀬女史は奥の方にある機械のモニターを覗いていた。
ジジジ、という不快な音と共にモニター上の波形が右から左へとうごいていくのが見えた。
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