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成瀬女史の隣を横切り奥に設えられた休憩室に入る。
休憩室と言っても周囲は相変わらず機械だらけで、その筐体の間にノイズのひどいテレビと大きなダルマストーブが置かれているのみである。
休憩室には先客が居た。
一羽は我が信愛なる同胞、二号である。
今日は非番であったが、テレビを見るためにわざわざ出社したらしい。
元々我々の種族にテレビを嗜むなんていう習慣はなかったはずであるが、人と共に暮らす過程で変性してきたのであろう。
テレビは雪のない南国の風景を映していた。
暖かそうである。
もう一人は所長である。
珈琲カップを片手に、もう片手をストーブにかざしながらのんきにテレビを見ている。
働き者の成瀬女史とは対照的な存在であるが、しかし、時として所長は鋭い洞察と驚異的な行動力を発揮することを我は知っている。
それがこの男に秘められた力であり、成瀬女史がここで働き続ける理由であろう。
であるからにして我はこの男の普段の行動に対して呆れはするが、存在への敬意は払っている。
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