ペンギンの世界

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「どういういみ?」(抽象的で質問の意図が掴み切れない) 「補足しよう。方や全てが人工的で高精度に組み合わされたシステムの世界、方やお前たちが長い世代を重ねながら生きてきた自然の世界。バベルの塔が出来るまでは二つの風景は人間だけが理解し、見てきたものだった。しかし、今はお前のような別の種族も同じ風景を見れるようになった。自然から生まれた種族であるお前から見て、それをどう思うか? ……はははっ、単なる好奇心だよ」  複雑怪奇なことを聞く。 同時に哲学的である。 我は首を伸ばしたり頭を傾けたりしながら熟考する。  目の前に広がる茫洋たる世界はもともと我々が住んでいた場所である。 そこには倫理や法律はなく、捕食者と被捕食者が生き残るために日々を過ごす、生産性とはかけ離れた世界だった。 品格高き我らが言語は自然には通じることはなく、余裕のない弱肉強食に怯える日々であったと、口伝として伝え聞いている。 ゆえに単純であったともいえる。 精度の高い情報はいらない。 必要なのは機械ではなく、生存本能と捕食者が居るか居ないか、獲物が近くで取れるかどうかといった単純な情報だけであった。
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