第24話

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すると、 「怒ってるよ!」 後ろからいきなり声が聞こえてきて 私はビクッと肩を震わすと ゆっくりと振り向いた。 「怒ってる!」 そこには、言葉に反して 優しく頬笑む神崎さんの姿があった。 「神崎さん...どうして...?」 私の瞳にみるみる涙が沸き出てくる。 「電話かけても出ないし、 帰ったら荷物は全て無くなってるしで 俺がどれだけ心配したか分かってる? どれだけ苦しかったか分かってる...?」 そう言って、神崎さんは苦しそうに顔を歪めた。 「ごめんなさい...」と 呟きながら俯くと、ポツリと涙が溢れ落ちた。 「それに、これ」 神崎さんの言葉に私が顔を上げると 神崎さんは私の書いた手紙を掲げていた。 「あ、あの...それは...」 私はすでに読まれてしまっていたことに 動揺して再び目を下に落とす。 神崎さんはゆっくりと近づいてくると 私の目の前でピタッと足を止めた。 そして、 「こんなんじゃ、俺は納得なんて 出来ないな...」 神崎さんはフッと微笑んでみせた。 「まあ、内容は感動したから貰っておくけど...」 そう言って、再び手紙をスーツの内ポケットへとしまいこむ。
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