第24話

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そんな神崎さんの行動に私は 涙をポロポロ流しながら口を開いた。 「神崎さん、ごめんなさい... 勝手に家を出てごめんなさい... 私、神崎さんを幸せにできる自信がなくて 諦めようと思ったんです... でもやっぱり神崎さんのこと どうしても諦められなくて...」 私は震える声を押さえるように 唇を噛む。 「離れたくないのに私と一緒になったら お母様を苦しめることになるんです... お母様にも笑顔でいてもらいたいのに... 神崎さん、私どうしたらいい...?」 私は涙で濡れた顔を両手で覆った。 少しの間、愛おしそうにかよ子を見つめていた翼はフッと柔らかく微笑む。 そして、フワッとかよ子の小さな体を包み込んだ。 「諦めて俺のものになるしかないって 言っただろ? それと母さんから、かよ子さんに伝言... 海外のホテルにも かよ子さんの絵を飾りたいから 早く帰って来てすぐに取り掛かれってさ...」 私は神崎さんの言葉に ビックリして顔を上げた。 「か、神崎さん、それって...」 「僕は何もしてないよ。 きっとかよ子さんの描いた絵が 母さんの閉ざしていた心を開いたんだ...」 神崎さんは優しく微笑んだ。 「それじゃあ... 私、ずっと神崎さんのそばにいていいの?」 私の込み上げる涙が頬をツーッと伝う。 「当たり前だろ...」 神崎さんはギュッと抱き締める力を強めた。
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