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「そういえばさぁ、
ここから車で下りたところに
新しく森の美術館ができたでしょ?」
向かいに座っているメグが
ふと思い出したように目を輝かせながら
聞いて聞いてと言わんばかりに身を乗り出した。
「うん!
お母さんがこの前、行ったみたいだけど
とっても良かったって!
私も今の描いてる絵がひと段落したら
行ってみようかなッて思ってたの」
私も新しい美術館を思い浮かべて
キラキラと目を輝かせる。
「それでね!それに伴って美術館の近くに
あの全国にホテルやレストランを展開してる
かんざきグループがリゾートホテルの
開発をしてるらしいのよ!」
そう言えば、先月、食材や日用品をまとめ買いするのに車で街へ下りた時に
美術館の近くに建設中の建物があったのを覚えている。
かなり大きな建物だったから、何が出来るのだろうと思っていた。
「へぇ...
かんざきグループ...」
名前はなんとなく聞いたことはあるけど
なんせテレビもニュースくらいしか見ないし趣味も絵を描くことか、美術館巡りくらいだ。
私はそこにはなんら興味が湧かず、クッキーをぱくついた。
「かよ子は美術館には食いつく癖に
リゾートホテルは全くもって
興味なさそうね...
かんざきのホテルのレストランは
美味しいって有名なんだからね!
それにそこの社長がすっごくイケメンなのよ!」
そう言ってメグはスマートフォンを取り出すと何やら検索して私の目の前に掲げてみせた。
「ほらっ、ね?
神崎翼、35歳独身!!カッコいいでしょ?」
スマートフォンに映し出された写真を
見るとメグの言う通り、神崎翼という人は俳優でも通りそうなほどの端正な顔立ちをしている。
ダークブラウンの少しウェーブのかかった黒髪に切れ長で色気のある漆黒の瞳はとても綺麗でまるで絵画のように目を奪われてしまうほどだ。
あまりに綺麗な顔立ちに人物画のモデルには最適な容姿だなと思ってしまう辺り職業病かもしれない。
「ねっ?素敵でしょ?
この秋オープン予定みたいだし
完成したら行こうよ!!
もしかしたら、神崎社長に会えるかもしれないしっ」
「メグには啓太くんがいるでしょ?」
啓太くんとはメグが高校時代から
お付きあいしている男の人だ。
啓太くんは実家の料亭を手伝っていて
メグとは長い付き合いだが
未だにラブラブらしい。
恋愛未経験の私には未知の世界なのだけど。
「それはそれ。これはこれ。
浮気じゃなくてファンとしてよ」
私はメグの言葉に呆れながらも
少し考えてから口を開いた。
「う~ん...折角の高級レストランなら
啓太くんと二人で行ってきたら?
「私はカヨ子と行きたいの!」
断固として言いはるメグに違和感を感じながらも
「別にメグがそこまで言うなら行くけど...」
押される形で渋々承諾した。
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