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今日は土曜日で家族全員で近所の遊園地に行くことになった。
遊園地には土曜日と言うこともあり、家族連れや中高生で溢れかえっていた。
「洋介、はぐれないようにね」
「ん?え…そこオレなの?」父は自分に指を指し聞き間違いではないか確認する。
理絵が父の左手を取り、強く握ると「だいぢょぶ。りえがパパ、つれていく」
「あ、オレなのね…」この家の女性陣には敵わない。と右手で頭を掻く。
すると早速、悟の姿が見当たらない。
「おーい、悟?」父が叫ぶ。
「ちゃとる?」理絵が真似をする。
母も必死になり、探す。
その時「ピンポンパンポーン、迷子のお知らせです。黒のキャップに灰色のパーカーを着ている。中山洋介くん、友達の悟くんがお探しです…」
悟は、はぐれて迷子センターに駆け込み、父を呼び出したのだ。
「…あはははっ、ヒー、ヒー」母が大笑いし始める。
父が咄嗟に黒いキャップを外すと周りを見渡し赤面する。
「悟?勘弁してくれ」息をひとつ吐く。
迷子センターまで迎えに行くとアナウンスのお姉さんは父親を呼び出した事に気付き、一礼して詫びる。
迷子センターからの帰り際、母が悟に「ナイスだったね悟!」と褒めていた。
家に着き、誰もいない家に四人が声を揃えて「ただいま?」と言い放ちリビングでくつろぎ出す。
父は冷蔵から冷えた缶ビールを出し、テレビをつけてバカ笑いを始める。
母は雑誌を開きソファでくつろぎ出す。
悟はカーペットに寝そべりゲームをしている。
理絵はクレヨンで壁にピカソの様な絵を…
「あーーーーっ!理絵っ!」母のその唐突に放たれた声に驚いたのか理絵は振り返り、泣き始めた。
父と悟も声に驚き、入り浸っていた個人の世界から現実に戻される。
「泣かなくていいよ理絵」よしよしと理絵を宥める母。そして続けて言う。
「って事で、明日、パパに壁を綺麗にしてもらいましょうね?」
「…ま、任せろ理絵」父がそう言うと理絵が泣き止む。
泣き疲れたのか、気付けば理絵は母の座るソファに横たわり頭を母の膝の上に乗せ、眠っていた。
父はそんな理絵を抱き抱え寝室に連れていく。
「悟、そろそろ寝るよ」母と一緒に寝室に行くと、缶ビールを呑んで眠くなったのだろう、父と理絵が寝息を立てて寝ていた。
悟と母も横になりその日を終える。
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