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四人が起きたのは昼過ぎだった。
「お腹すいた~」悟が母に向かって言う。
「理絵もおなかちゅいた」
「ちょっと待ってな」母はボサボサの髪のまま眠そうに朝と昼兼用の食事の支度を始める。
父は眠たそうにソファに横たわりあくびをしながらテレビをつける。
その横で鼻水を垂らしながら理絵もテレビを見ていた。
悟は相変わらず起きて早々、ゲームのスイッチを入れる。
「ご飯出来たから並べてや~」母が言う。
「……」誰も一切、動こうとはしない。
「洋介ぇ~、悟ぅ~、理絵~ご飯の準備してや~」
『う~い』全員が気のない返事を返す。
勿論、動かない。
当然、母はぶち切れだ。
「お前ら全員、一週間、ゲーム・テレビ・ビール禁止な」三人をリビングで正座させて言う。
「ビールまで…」父はあからさまに落ち込んで見せた。
理絵は正座が疲れたのか、三角座りしていた。
四人が食卓に着くが、怒られた後での三人に会話はなく、静寂が場を包む。
そして静寂を切るように母が話し始める。
「悟はご飯終わったら宿題しなよ。洋介は理絵が描いた落書き、消してよね」
二人は揃って『はーい』と返事する。
「ママ、理絵は?」と米粒を口周りに付けながら理絵が聞く。
「理絵は大人しく、おままごとでもしてなさい」
「はーい」
とある平日、悟が下校途中にスーツ姿の父を発見した。
父は悟にまだ気付いていない様子だった。
悟は父の方に駆け寄り、父に話し掛ける。
「お父!」悟が声を張る。
驚いて振り向いた父が「なんだ、悟か。今、帰りか?」
「うん。お父、一緒に帰ろうよ」父も帰るものだと思い、誘う。
「今から、大人の事情でまだ帰れないんだ」父が手を合わせ謝る。
「あっそ」悟は不機嫌そうに言うと父は目の前のカフェに入っていった。
カフェはガラス張りの外観で外から店内が丸見えだった。
少しの間、悟はガラス越しに父の姿を追うと女の人と仲良く談笑しているのが目に入って来た。
「早く帰らないとお母に怒られるぞ」
悟は聞こえるはずのない声をガラス越しの父に向けて小さく漏らす。
悟が家に着くとまだ誰も帰ってきていなかった。
少ししてアパートの階段を上る音が聞こえ、母と理絵が幼稚園から帰ってきた。
「ただいま、悟。今からご飯作るから着替えて宿題して待っとき」
「はーい」悟は着替え、脱いだ服を洗濯カゴに入れ、宿題のドリルを開く。
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