賄いケーキと間違いコーヒー

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賄いケーキと間違いコーヒー

夜が明ける手前、始発の動き出しに合わせ数年ぶりに早起きする春休みの1日。大学生の貧相な財布に栄養補給するため、バイトの応募に踏み切ったのが一週間前。人の良さそうな店長に迎え入れられ労働決定。初日にして寝不足の体は布団から這い出すことに多大な労力を使用した。  バイト初日は基本覚えることだらけである。終わった後にはどっとした疲労感が蓄積される。次々と増える未体験の課題は思ってたよりも精神にくる。早く帰って一休みしよう。 「じゃあ上がります。お疲れ様でした。」 「あっ、ちょっと待って」  パートで日中だけ働いているという主婦の先輩に呼び止められ、足を止める。 「うちの店で働いている子は新作のケーキを賄いとして食べられるの。よかったら食べてって。」 「それなら頂いていきます。」  ちょうど糖分が欲しかったところだ。袖を通しかけていたコートを脱いで椅子にかける。 「じゃあ、これ桜のロールケーキ、それとオーダー間違えちゃってコーヒー余っちゃったからこれもよかったら。」  さっきまでドリンクを担当していたからわかる。コーヒーのオーダーはここ30分出ていない。緩やかな音楽が流れる店内で、湯気の立つそれを口に運んだ。     
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