老猫は夢を見る

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 かーっと威嚇して、思い切り、子分の腕をひっかく。力が緩んだところを、するりと抜けだし、我は知らず知らず、ふーふー唸った。 「みゃあちゃん、痛いよぉぉ……うー、ごめんなさいっ!」  子分は目にいっぱい涙をためて、部屋を出ていく。  ……やれやれ、これで静かになった。  怒りで、ぶわっと膨らんだ尻尾をなでながら、我の心に後悔が少しばかり。  やりすぎたか?  いやいや、あれくらいせねば、伝わらん。いつまでも子供の気分でいられては、こちらの身が持たぬではないか。  あれと初めて会ってから、五回、季節は巡った。  自分で歩くこともできず、ことあるごとに、みゃあみゃあ鳴いていた子供。  四本の足で我の後をついてくるようになったと思ったら、いつの間にか二本足で歩きだした。  みゃあちゃん、と呼ぶ頃にはずいぶんと。  ずいぶんと大きくなった……  なにを食べれば、ああも大きくなり、力が強くなるのだろう?  その上、あれは元気の塊だ。かまっていたら、どんどん力を吸い取られてしまう。  それに比べて、我ときたら……  ちょっとのことで疲れやすくなった。  大好きな鮭の缶詰も、全部食べようとすると、気持ち悪くなってしまう。  眠る時間も、ずっと増えた。   眠るのは、嫌いではない。     
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