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夢の中では、我はどんな猫よりも自由に駆け回っている。空に浮かぶ白い雲さえ捕まえられるくらい、高く高く、飛べるほど自由。
けれどね。
最近、少し感じる。
このまま眠って、目覚めなければどうしようと。
目覚めた先が、我以外、誰もいなかったらどうしよう。
死とはどのようなものなのか?
寂しいのか。苦しいのか。一人ぼっちなのか。
……まあ、気にしても仕方のないことなんだがね。
我はあくびを一つ。
と、そのとき、どこからか雨の匂いが流れてきた。これから一雨くるかもしれない。
まったく梅雨は嫌なものだ。
我は身を小さく小さくして、目を閉じる。心細い心に訪れた眠りは、救いであるような気がした。
***
魅惑的な匂いに、我はゆっくりと目覚めた。
この匂い、今日のボスの酒のツマミは炙ったイカとみた! 我の大好物である。
その事実はいつもならば、たいへん心躍るところなのだが……
今一つ、我は浮かない気持ちで伸びをする。
しとしと、と。
はたはた、と。
雨音が充満する部屋は、薄暗く、寒々しい。
……ひとり、か。
当然である。みな、一人で生まれ、一人で死んでゆくもの。
それが、この世の理である。
我は前足をぺろぺろ舐めて、ふーと長く息を吐き……気づいた。
少し離れたところで、丸くなって寝ている子分の存在に。
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