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老猫は夢を見る
「みゃあちゃん、どこどこ~」
二本の足で歩く我が子分が、今は我と同じように四つ足でテーブルの下を這っている。
お前の手が届くところにはいかないよ? かまってられない。
我は自慢の尻尾をぴんと立て、右に左にゆらゆらと。
ピアノの上を澄まし顔で歩き、物音たてず床に降り、ひそかに、ひめやかに階段へと。
今日はいい天気だ。
ここ数日雨続きで重かった空気が一転、気持ちよく乾いている。
和室の窓際。
我の灰色の毛並みに映える、空色のクッションでまったり、まったりとくつろぐ。
ボスが仕事から帰ってきて、ご飯をくれるまで、まだまだ間がある。
一眠り、二眠りするとしよう。
柔らかな日差しの中、ごろごろ喉を鳴らして、真っ白な腹を舐める。
老猫の域に入ったが、まだまだ毛並みはピカピカだ。
若いものに負けまいよ。
そんなことを思っているうち、頭がふらふら揺れ出した。
あたたかい。
眠りに落ちるまでの、まどろみのふわふわとした心地にうっとり、うとり。うとうととしていたそのとき。
「あー、みゃあちゃん、いたぁ!」
……しまったっ。
ぎゅうと抱きしめられて、我は慌てる。
っ。痛い、痛いっ! お前は少し加減を覚えろ!!
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