20 琉加

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教会の外門を開けて 敷地に入る。 石畳の向こうに建つ、白い小さな教会を見ると あー、やっと戻ってきたっていう安心感と 戦後に 一度建て直されたとはいえ 潜んでいたキリシタンたちが、ようやく堂々と 祈れるようになった場所のひとつだと思うと ちょっと感慨深い。 明かりが消えた教会の外側を通って、裏の家の方に回る。 「あれ?」 教会と家の間の、地下室の蓋が開いていた。 中から薄く灯りが漏れている。 琉地が するりと入って行った。 「蓋してたよな?」 「でも、ここも教会だったんだ」 コンクリートの階段を降りるジェイドに続いて、 オレも降りる。 石の壁の窪みには、一つ一つに蝋燭が立てられ 小さな炎が地下室を照らす。 「本山さん」 十字架の前に、助祭の本山くんがいた。 ジェイドの声に振り向くが、頬は涙に濡れている。 「ヴィタリーニ司祭... 」 琉地が 十字架の下に前足をかける。 十字架の下の小さな窪みには、メダイが入っていた。 「教会を閉める時、落ちていたメダイに気づきました」 メダイは教会の通路、扉の前に落ちていたらしい。 本山くんは、メダイを拾うと 教会の扉の鍵を閉め、裏口から教会を出た。 「話し声が、聞こえてきて... 」 視線の端に何かが入り、そこに目を向けると 地面から 四角く光が漏れている。 近づいて蓋を開けた。 階段を降りると、光が溢れていた。 十字架の下の窪みから。 「耐え忍び、待ち望む人々の 信じる声がしたのです。祈りと共に」 洞窟教会で起こったことが、ここでも起こったようだ。 「声が遠のき、光は ゆっくりと消えました。 教会から蝋燭を持ち出し、ここに立てると 十字架の下にメダイを捧げて祈りました。 よく、待ち続けてくださいました と 彼らに伝えたかったのです」 そうか... フランス教会のメダイは、禁教令が解かれてから日本に入ってきたものだ。 教えを護り伝えてきた人たちに、それを伝えることが出来る。 もう隠れることはない。 地上に建つ教会で祈ることが出来るのだと。 ジェイドが 本山くんの肩に手を置く。 「きっと伝わりましたよ。 毎週、ここでも共に祈りましょう。 彼らが御国に近づくことが出来るように」
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