3 琉加

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あっ、そうだ。 「ハティさぁ、本 借りたいって言ってたぜ。 前神父の」 これ頼まれてたの、忘れてたわ ちょっと。 「本?」 ジェイドは 臭いもんでも嗅いだような顔をした。 「そ。狭間とかで前神父を見た って言ってたぜ。 知識がある とかも言ってて。 オレさぁ “リンだけじゃなく、オレとジェイドの 記憶も消せばよかったじゃん” って言ったんだよ」 「それで?」 「それじゃあ友人として成り立たないんだと」 おっ。臭がる顔じゃなくなった。 「... いいだろう。 ハティには ルカが本を渡してくれ」 「あとさぁ、おまえ 何かに見られてるって言ってたじゃん? ハティが そいつを見に来るってさ」 「教会には入れん。勘違いするな」 あっ。やばいな なんか。 こいつ、急にキレたりすることあるんだよな。 「門の外なら いいじゃん。 おまえも神父としてじゃなく個人として会えばさ。 何が見てんのか気になるしさぁ」 うーん、頷かねーなぁ。 「わかった。じゃあ、オレとハティで張り込むわ」 「... いや。僕もいよう」 ジェイドは 仏頂面のまま 「行こう」と、湯呑みをテーブルに置いた。 「僕の給料には、食事代や光熱と通信費がプラスされるが、質素な暮らしが求められる」と 会計用紙をオレに渡す。 「いや、それは いいけど オレまだ お茶飲んでないんだけどー... 」 「帰ったら コーヒーを淹れてやる。 竜胆に直火用のポットをもらったんだ」 ジェイドは椅子を立ってスタスタと歩き出す。 こうあるべき、というか 本当なら問答無用でハティを祓うくらいが当たり前なんだろうけど。 ジェイドは どっか神父になりきれないっていうか よく神父と自分の間で葛藤するんだよな。 会計用紙を持って オレも椅子を立った。
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