5 琉加

2/5
896人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
空き地にも満たない道の終わりに こっちに背を向けた ハティが立っている。 相変わらずの黒いスーツ姿。 夜とはいえ ジェイドより暑苦しいよなぁ。 ハティの前には、うちの庭にも劣らない丈の草の中、円形に石を積んだ何かがある。 ハティは 振り向くと 「もう少し離れろ」と言いながら オレらの方に向かってきた。 二、三歩 後退ると、ハティが オレらの前に立ち 短い呪文みたいなものを唱える。 足の下が揺れたかと思うと、草の中の円形の石が崩れ、小石や土が大量に噴き出した。 「えっ! なんだよそれ?! 軽く爆破してんじゃねーか!」 ちゃんと予告しろよなぁ、もう。 「塞いでいたものを取り除いただけだ」 ハティが、ふう っと軽く息を吹くと 周りの土ぼこりが消えた。 三人で 石が積まれていた場所に近づく。 穴だ。直径1メートルちょいくらい。 暗くて底が見えない。 小石を落としてみたけど、水の音はしなかった。 「枯れ井戸か?」 ジェイドが聞く。 「いや、道だ」 道? ハティが言うには、穴の底には 横に掘った道が続いているらしい。 「どこに続いてんの?」 オレが聞くと、ハティは穴の上に手をかざした。 「... 方向的には、向こうだ」 指差したのは、教会や墓地の背後。 キャンプ場の隣の山だ。マジかよ...
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!