1 琉加

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「ジェイドに本のことは言ってみるけど ハティさ、どうせなら リンだけじゃなくて オレとジェイドの記憶も操作したら よかったんじゃねーの?」 リン... 妹が憑かれた後 ハティは 妹からその時の記憶を消した。 「それでは、友人として成り立たん」 ... ふうん。 まあ いいか。 「オレ、嫌いじゃないぜ。おまえのこと」 「それは光栄だ。 この国の歴史書物を所望する」 またかよ。 ハティは握った手に金貨を出し、オレに差し出しながら 「キリシタン弾圧についてのものを幾冊か」と 指定する。 ハティは 週に 一度くらいの頻度で、こうして本代の金貨を渡す。 金貨は換金することになるし、それが 一手間ではあるけど、だいたい いつも五万くらいになる。 本を買った釣りは オレの小遣い。 まあ、割りのいいバイトみたいなもんだよなー。 フローリングから立ち上がって金貨を受け取ろうと手を伸ばした。 ハティはオレの手に金貨渡すと、そのまま腕を上げ、人指し指でオレの顔を指差す。 「あれ?」 オレは何故か テーブルに手をつき、引き寄せられるようにハティの人差し指に額を当てた。 えっ、気持ち悪っ。 すぐに指が離れ、身体を起こしたけど... 「ちょっと、何なんだよ これ」 「刻印を付けたのだ。 たいていの悪魔は お前に近寄れまい」 なんだそれ。 鏡で額を見ても特に何もない。 「さて。読書を再開することとしよう」 「あっ、静かにしろ ってことかよ?」 ハティは 開いた本に視線を落とすし 仕方なく外に出ることにした。
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