1 琉加

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1 琉加

「ほう。まだ繁らせようと?」 玄関先に水を撒いた後、庭にも水を撒いていると 赤い肌の魔神が 読書の手を止めて言った。 「もーう、うるせーなー。 あっついから 暑気払いしてんだよ」 庭は 見事にミントで覆いつくされた。 ガムみたいな匂いするし。 しかしさぁ、ミントってすげぇよな。 たった 一袋の種から こんなになるとは。 他の雑草も生えてこねーくらい旺盛に生えやがる。 梅雨が明けた時、イヤな予感はしたんだよな。 やけに庭が緑色してんな って。 盆はほとんど実家にいて、帰ったらこれだし。 まいるぜ ほんと。 「ま、虫は少なくなったし... 」 ホースを くるくる巻きながら何気なく言うと 「先住生物を脅かすつもりだとは」と ハーゲンティが言う。 「先住生物って... ここ、オレん家だし」 ハーゲンティは、大昔ソロモン王に使役された 72柱の悪魔のうちの 一人らしい。 春に、妹が悪魔に憑かれた。 その時に オレが呼び出した形になったんだけど、主に使役されてるのは オレの方だ。 本買って来い とか、指定の本が本屋になきゃ図書館まで行け とかさぁ。 パソコンで読めるものもあるぜ って言っても 手に取って読むものだ って聞かねーし。 本の情報は調べるくせによ。 最近、映画まで観出しちまったから オレより オレん家にいるし...
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