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「みなさん食堂におそろいの頃か?」
重い身体を起こすと
シルクのガウンを羽織って僕はベッドを抜け出した。
「いいえ。本日はどなたもいらっしゃいません」
鏡の前に立ち大あくびする末っ子に
すかさずスリッパを差し出して中川は首を振った。
「どうして?」
「征司様は最近は書斎で召し上がる事の方が多いですし、今朝はもうお出かけに。貴恵様はつわりが長引いておられるので九条家の別荘地にご静養に行かれたままですし。薫様もコンクールが近いので朝早くから夜遅くまで大学に詰めたままでいらっしゃいます」
話を聞きながら洗面所へ向かい顔を洗う。
あうんの呼吸で差し出されるタオルで顔を拭くと
「……九条さんは?」
僕はそれとなく――。
「九条さんはどうしてる?」
本当は一番に様子を聞きたかった義兄の名を出した。
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