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episode228 怒れるオレンジ
何事もなかったように連れ戻された天宮の屋敷は
やはり何事もなく静かなものだった。
「和樹坊ちゃま!」
「中川か……」
数日ぶりに突然
自分のベッドで眠っている僕を見て
部屋にやってきた老執事は目を丸くした。
「今まで何をなさっていたのです?」
人にはとても言えないような取り調べの後だ。
「せっかくその年まで生きて、わざわざ知らない方がいい事もあるよ」
「は、はぁ……?」
夜中のエスプレッソの効果もなく
心身ともに消耗していた僕は
「今何時?」
「朝の10時でございます」
久しぶりに自分のベッドで
ぐっすり眠り込んでいたというわけで――。
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