撮影者

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 五日前の六月十四日。目の前に突然、暴走した白い自動車が突っ込んできて人一人をはね、ビルに衝突した。あと何歩か進んでいたらと思うと鳥肌が立ったのを覚えている。天気が良く、雨の日の傘のように遮るものがないせいで尚更鮮明にこの目に焼きついた。  運転手は即死だったが男はまだ生きていた。血溜まりのアスファルトに仰向けに横たわったまま、何かを言いたげにこちらを見つめていた。駆け寄る者が居ないから僕は彼に近づいてすぐに救急車を呼んだが集まった人たちはただ見ているだけで、中には写真を撮っている人もいた。流石の僕でもそんなことは出来なかった。  だが救急車が来た頃には彼は絶命してしまっていた。  事故死した男は連続殺人鬼だった。花を供える者はいない。生前、彼がおかした罪を考えればそれは当然なのかもしれない。  それでも……悼む人が居ないのは可哀想だと思ってしまった僕は花を供えた。償いのつもりだったのかもしれない。だが思えばそれが全ての始まりだった。  あの日、帰宅して玄関の扉を開けると包丁を持った男が佇んでいた。
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