第一章~真実と事実~

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確かに、この場所――東京は安全かつ幸福を保証されているようだ。  30メートルを優に超えるほどの安全壁に囲まれた都市部。上空はレーザー照射されたホログラムが覆っている。 他国からの干渉、攻撃は全て皆無。 「この国は紛い物の幸福だな」  カフェテリアで議論を持ち込み話し合うのは僕と同チームのジョン・ケリー。 「ケリーはここに来て幸せじゃないって言うのかい?」 「幸せって言えば幸せだ。だが幸せじゃないって言えば幸せでも何でもない。あるのはただの地獄そのものだ」  ケリーは日本で誕生した人間ではない。彼はアメリカという共和国で命を灯した。 「だったら母国の方は?」 「あそこは幸せという定義そのものが破綻している」 「考えさせてくれる余地すら与えて貰えないからな」 「俺とササキ。ここに住む日本国籍の人間はあらゆる人間に支えられていることを忘れたら駄目だってことだ」  こうやって仕事の合間にトークを愉しむのは慣習の一部。 「あちらで作られているものは僕らの一部に成り得ているってこと?」     
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