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「そうだ。自国で産み出せないものは他国から奪う他無い。ならいっそう、自国で有り余ったマネーを使って買い占めようとしたのがここ日本ということだな」
「でもそうすれば、あちらの人達にも収益があるじゃないか?それって幸せに繋がるんじゃないの?」
ケリーは無言で上空を眺める。これは故郷を嘆く時の癖みたいなものだった。
「一部の人間だけだ……政権や軍事、国権に関わるお偉いさんどもに牛耳られたんだよ」
「民間団体もデモを起こしたりしたさ、だがな国の殆どの戦力を持つ軍部には勝てっこない」
「俺の歴史なんてそんなものさ」
僕は何も言うことが出来ない。何せ僕は正真正銘の日本人。彼の国を破滅に導いた張本人なのだ。
「じゃあ、僕、いや僕らに恨みは無いのかい?」
「確かにお前は日本人で俺の国を消した国の民だ。だが、そんなことを言っていたら俺がここにいる存在意義が無いだろ?」
「そうだね、すまない……」
「何もお前が謝ることはないぜ。俺は俺のためにここにいるんだからよ」
彼はアメリカ人。僕が消し去った国に住んでいた住人。この国は狂気そのものだけれど、反抗することや対抗することが僕には、僕達には出来ない。
それは自分を死に導くことでもあるのだから。
「おっ。召集の時間みたいだぜ」
彼は店内の天井からぶら下がったモニターを見ている。
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