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僕はあまりにも冷静沈着すぎて非人道な人間のようだった。いや、非人間的だったと言い換えるべきだ。
「とても理性的だこと。だが彼等はそんなことを考えてられないんだ。言っただろ?富の大部分を国の上層部が独占しているんだ」
「俺達一般市民には人権なんてそんな大層なものは存在しない。あるのは鞭だけだ」
「考える暇も無かったということ?」
「簡潔的に言えばそんなとこだ」
雨と鞭の雨が非情にも欠落した国。自由主義を掲げていたかつての故国はどこへ行ったのだろう。
「まるで産業革命時のイギリスみたいだね」
二度目の笑い声が聞こえる。今度はさっきと違う単に興に浸っている調子だった。
「上手いなその表現。なら俺も同じように返してやろう」
『世の中には幸福も不幸もない。 ただ、考え方でどうにでもなるのだ』
「シェイクスピアかい。今日は国に掛けたんだね」
「と、楽しいお話会も終わりみたいだぜ」
目の前のモニターには物々しい光景が広がっていた。
燃え盛る炎と逃げ場の無い瓦礫の山。無惨にもスポンジのように穴が空いている廃ビルの数々。
「ここがボストンなのかい」
書物に載っている輝きしか知らなかった僕は、あまりにも違いすぎる現実に認めることが出来なかった。
「ああ。俺のふるさとだよ」
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