ゴリラの章 2

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「でも、この映像だけじゃ、犯人の人相も背格好もはっきりしないわね」  琉璃――桜井琉璃(さくらいるり)巡査部長は、額に八の字を寄せて困っている。  彼女は若いながらも、人の出入りが激しい調査室ではすでに中堅どころだ。  170センチの長身。シンプルにまとめた髪。まっすぐな姿勢で、きびきびと動く。  かっちりとしたパンツスーツ姿が、生真面目な彼女の性格を表している。だが、その服装が彼女の豊かな胸を逆に際立たせている。本人はとっては密かな悩みだ。 「元は、一つの画面が4分割されてたみたいなんです。それぞれに別の監視カメラの映像が記録されていた。4分の1サイズだから、画質が(あら)いんですね」  神保護(じんぼまもる)巡査が、捜査資料を読みながら解説する。  神保は25歳。調査室の捜査員の中では唯一の男性だ。控え目で、いつもおどおどしている。ひょろりとした色白で、どこか中性的な容貌。 「いいから神保、もっぺん最初から。早くしろよ」  芳乃が、偉そうに年上の神保に指図する。  芳乃――小葉芳乃(こばよしの)巡査、20歳。同時期に配属された神保とは対照的に、ガサツで無作法。  身長152センチ。やせっぽち。濃い眉にぎょろりとした目。ショートボブの髪はくせっ毛なのか、所々あらぬ方向に跳ねている。
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