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「元に戻ると、どうなる?」
「人格消失時の記憶は、元の人格には残りません。事件を起こしても、本人はその自覚のないまま普通の生活に戻る、というケースが多いです」
まいったな、という様子で鈴井の表情が渋くなる。
当人に自覚がないとなると、通常の故意犯よりも厄介だ。なにより〈証拠の王様〉とも称される自白が役に立たない。目撃者がいなければ、事実を知っている者がこの世に誰もいないという事になる。
鈴井の表情を読み取って、琉璃が補足する。
「確かに事件の立証は難しくなりますけど、打つ手はあります。本人が再び人格消失する現場を押さえるんです。時間をおいて、定期的に人格消失を繰り返す発症者が多いですから」
「たしか、大田の通り魔事件もそうでしたよね」
白石の発言に、琉璃はしまった、という表情を一瞬見せる。
「聞きましたよ。派手にやったそうじゃないですか」
愉快そうに笑う白石。琉璃は「はあ」と肩をすぼめ、小さくなる。
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