ゴリラの章 2

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 ――被疑者、岸本は夜毎に人格消失(ブラックアウト)し、通行人を無差別に襲った。目撃証言から岸本に疑いが掛かったが、彼は出頭を拒否。  琉璃と芳乃の張り込み中に岸本が逃走したため、追跡のうえ確保した。  そのときアーケードの屋根から落ちた岸本は、全身複雑骨折で全治8ヶ月。  結果的に岸本はEDDと診断されたが、その行き過ぎた捜査が批判の的となり、新聞やテレビで散々槍玉に挙げられた。  琉璃は厳しい処分を覚悟したものの、意外にも口頭での訓戒だけで済んだ。加賀主任が上層部に掛け合ってくれたお陰だろう。  それでも、優等生の琉璃にすれば大きな黒星だ。昇進に影響するかも知れない。琉璃はうらめしげに芳乃を見る。  芳乃は悪びれもせず、にはっと笑い親指を立ててみせる。口許の両端から、逆三角形の白い犬歯がこぼれた。
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