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「まるでゴリラね」
「ゴリラっすね」
「そうね、ゴリラだわ」
「確かにゴリラですね」
パソコンのディスプレイを囲んで、4人は異口同音に感想をもらした。
警視庁刑事部要件不適合事案調査室。
けいしちょうけいじぶようけんふてきごうじあんちょうさしつ――この部署の正式名を、舌を噛まずに淀みなく言える者は少ない。詰め込みすぎた名前のせいで、逆に調査室という曖昧な呼び方が定着してしまった。
調査室に所属する捜査員は4人。そのほかに、今日は部外から二人の刑事が部屋を訪れている。
「俺も長年やってるが、こんな事件は初めてだよ」
八王子西署の鈴井という、年かさの刑事が頭を掻きながらこぼす。
「これが例の、ヌケモノってヤツですか」
もう一人の少し若い方は、本庁捜査一課の白石刑事だ。
彼の質問に、調査室の加賀主任がおだやかな笑顔で答える。
「はい。この映像を見る限りそのようですね。正確に言うと、EDDの発症者です」
「EDD?」
「情動性離人障害。顕在意識が途切れて、論理的な思考ができなくなる病態です」
落ち着きのあるしっとりとした声。彼女はストラップ付きの眼鏡を外しながら続ける。
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