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春利が再びピアノに触れるようになったのは、半年の冷却期間をおいて、ピアノが恋しくなったから、というわけではない。相変わらずピアノのことはどうでもよかった。ただ他人からピアノを弾くように求められたのだった。
「伴奏は小林くんがいいと思います」
急に名前を呼ばれ、ぼんやりしていた春利は突然叩き起こされた。気がつけば周囲のクラスメイトが自分を振り返って見ている。正面の教壇にはクラス委員の園崎と梅田。黒板には
合唱コンクール
合唱曲 ○○○○○○○
指 揮 園崎
伴 奏
と書かれている。春利の頭がノロノロと状況に追いついてきた。そうだった、今はホームルームの時間で、2ヶ月後の11月に行われる合唱コンクールに向けた話し合いをしていたのだった。
「小林くん、いいですか?」
有無を言わせない強い口調で園崎が尋ねる。依頼というより確認のようなその言葉に、春利は考える余裕もなく頷いていた。園崎が黒板に向かって
伴 奏 小林
とかきつけた。
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