第一章(序章)

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 イズム少年が猟銃を初めて手にしたのは九歳の時だ。その経験が早過ぎるのか、そうでもないのかは、 小さな村からほとんど出たことのないイズム自身、誰かと比べることはできないし、どうでもいいと彼は思っている。  彼に銃を手渡したのは鳥撃ち猟師として評判の高い父親だった。 父のまた父親である祖父も、その父であるひいじいさんも、イズムの家の男は代々鳥撃ちで生計を立てていた。  ただ、イズムの父は生まれつき胸の病を患っていた。それでも、イズムの血筋の中では一番腕は良かったので、 ぜいたくさえ望まなければ暮らしぶりは苦しくはなかった。  イズムにとっては小さい頃は、いっしょにくらしていた祖父と若い父が連れ立って猟の支度をする姿を見るのはワクワクするものだったし、 祖父が病に倒れ、亡くなってからは、その少し細い身体のわりに、きたえられた腕で数本の猟銃を選び背負って出かけていく父の姿は誇りだった。
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