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しかし、ある夜。突然、父はイズムを呼んだ。
「イズム、明日から、鳥撃ちを教える。一緒に来なさい」
虫取りしかしたことのないイズムは、それは驚いた。まだ九歳のほんの子どもだ。
その驚きはすぐ興奮にすりかわった。(俺は父さんに一人前に見てもらったんだ)
と。翌朝は早いから、すぐ寝るように言われても目はらんらんと開き、心臓がどきどきした。
初めての猟は、草原に立てられたわら束の的で、イズムは意気消沈した。しかし、それは直後、更に絶望に変わった。
「これがお前の銃だ。俺が最初に親父に持たされたヤツで、今もちゃんと手入れしている。
お前に銃の持ち方を教える日のために」と両腕に持たされた銃身の重さ。
音消しの耳当てで塞いでいたとはいえ、火薬が耳元で破裂する音の大きさに驚いたイズムは銃を持ったまま、後ろに吹っ飛んでしりもちをついた。
イズムの身体の震えは長い間止まらなかった。父は冷たく彼を見下ろしていたが、
やがてしゃがんで冷たい水の入った水筒をイズムの口に当てた。
「ゆっくり飲め。急ぐな。せき込むから」
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