第一章(序章)

4/4
前へ
/36ページ
次へ
 そして、冷や汗まみれで震える息子の身体をしっかりと抱きとめた。 「イズム。いいか、俺の胸の病はもう治らない。俺はもう長く生きられない。 お前が、母さんと、妹を食べさせていくんだ。 鳥を撃って、必要な分だけ家族の食料として取り、 残りは町へ行って売って、その金で暮らしていくんだ。 俺は、死ぬまでにお前に俺の持っている技術のすべてをお前に教える。時間はそれほどない。覚悟しろ」  その前の日の猟で、父は血を吐いていたのだ。  それから半年の猛特訓の末、イズムは父に一人で猟に出る事を許された。 もともと血筋の良さもあったのだろうが、本当につらい修行の日々で、イズムの身体には大小の生傷が絶えず、 しかしその小さな身体にはみるみるうちに筋肉が付き、やがて身長も伸びていった。 たくましく成長していく息子の姿に満足そうな笑みを浮かべる父の身体は少しずつやせ細り、一年後、父は大量の血を吐いて死んだ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加