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「早苗ちゃん?」  名前を呼ばれ振り向くと、そこには私と同じ学生服の女学生がいた。その顔形に、私は見覚えがあった。 「もしかして、美恵なの」  恐る恐る私がその名を口にすると、美恵は屈託のない笑顔で静かにほほ笑み、私の手を握った。 「やっぱり早苗ちゃんだ、一緒の学校だったんだね」  美恵は私が小学生の頃に友達になった子の一人であった。当時私は上級生ばかりの通学班の面子になじめず、ある日、集合場所の公園を避けて一人だけ先に学校へ登校したことがあった。  私が教室に入ると、先客がいた。それが美恵だった。窓際の席に腰かけたまま窓外の景色を見つめている。彼女は同じクラスだったが、私と席が離れていたこともあってか、口をきいたことは一度もなかった。私は教室の入り口から彼女と挨拶を交わし合うと、自分の席の上にランドセルを置いて彼女に近づいた。 「早いね。高山さん、いつもこんな時間に来てるの?」 「うん。皆と一緒に通学すると、いじめられるから」     
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