第一章

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大学在学中、当時、沖縄料理専門店でアルバイトをしていた俺は、アルバイトが終わり駅に向かう途中でコーヒーを買おうと立ち寄ったコンビニで黒いスーツを着た集団と遭遇してしまった。 その集団の中に松竹会の組長がいた。組長は組事務所までトイレが我慢でききないとコンビニに立ち寄った所に俺がたまたまコーヒーを買いに行ってしまったのが、俺がヤクザになった原因である。 当時、組長は破門した下っ端に命を狙われていて、コンビニのトイレに入る事すら組員を数人つけていかなければいけないほど命の危機があった。俺が立ち寄ってしまったコンビニのトイレに入るときでも周囲を警戒するほどだった。 今思えば、トイレに入りたいなら組事務所まで我慢してくださいと思うよ。 コンビニの出入り口は2カ所、トイレの出入り口は1箇所で、その3カ所に組員を配置しておけば拳銃やドスを所持している奴が襲ってきても、組長までは到達できないとは思っていたが、組長がコンビニからでた瞬間、ダイナマイトを体に巻き付けた男が駆け寄ってきて、組長の周りにいる組員もろとも吹き飛ばそうという考えだったのだろう。 体に巻き付けたダイナマイトに火をつけた状態で駆け寄ってくる男を見た瞬間俺は、手に持っていた今できたての熱々のコーヒーをそいつに投げつけた。 そうしなければ、組長が殺される事よりも、コンビニもろとも自分が死んでしまうと思ったからだ。 大学生がアルバイトの帰りに立ち寄ったコンビニで、組長を狙った男が体に巻き付けていたダイナマイトで巻き添えを食って爆死など笑えない話である。 俺は自分が殺されないようにという一心で、できたての熱々のコーヒーをダイナマイト男に投げつけた。 コーヒーは見事男の胸元に命中し、ダイナマイトの火が消えたのである。 ダイナマイトを巻き付けた男が駆け寄ってきたとき、その男を撃ち殺したとしても火は消えない。 たまたま、ほんとたまたまコーヒーを買っていた俺がいて、そのコーヒーがちょうど出来上がり、男に投げつけることができて火が消えたから良かったが、何かがずれていたら、組長もろとも爆死してたのかと思うと恐ろしい。 で、それからだよ俺の人生が変わり始めたのは。 自分の命が助かりたいからとった行動とはいえ、結果的に組長の命を助けたことには変わりない。
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