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容姿も体格も、客と比べたら黒崎の方が圧倒的に強者だ。
怯えた客は転がるように自分の荷物を取り、財布から万札数枚を投げた。そのまま服を掴み、ドアへと走る。
「谷崎様!」
黒崎の声にドア前で客は飛び上がった。
「シャワーはよろしいのでしょうか?」
先程よりは僅かに和らいだ声音だが、客は肩を震わせ黒崎を睨んだ。
「冗談じゃねーよ!」
そう吐き捨てて客は部屋を飛び出していった。
「去り際だけ強気に出られてもね」
黒崎は客が捨てていった万札を拾い上げ、舌打ちをする。
「足りねえな。逃がすんじゃなかった」
万札を折りたたみポケットに入れ、黒崎はようやくルナを振り返った。
「よく我慢できたな。来い」
その言葉でルナはようやく動き出し、黒崎の脚に縋り付いた。
「くろ、さきさん……黒崎さん」
身体の疼きは限界だった。
黒崎のスーツのボトムに手をかけ、熱い雄を求めて触れようとすると、その手を掴まれる。
「ここでは抱かねえよ。家まで待て」
「いや……、やだ……いま抱いて、犯して」
「だめだ。すごい匂いだな……。やはり、βじゃ役不足か」
部屋にはルナのフェロモンの甘い香りが充満している。散々抱かれた後なのに、香りは少しも薄まっていない。
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