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この店でルナの秘密を知るのは黒崎のみ。だからこそ、黒崎は誰もいないタイミングを見計らって予約リストを見せてくれたのだろう。
黒崎から渡された予約リストの紙をざっと見る。
22時に予約を入れてる男の名前の横に、赤字で『A希望』と書かれている。男の名前は知っていた。半年ほど前から自分を指名しているβの男で、清潔感もあり、プレイも乱暴ではない。
(ま、実際に発情プレイに入ったらどうなるか分かんねえけどな)
でも、理性がきかなくなるのはお互い様だとルナは嘲笑を浮かべる。
予約コース時間は90分。この店の閉店時間は24時。延長を希望されても24時で強制終了となる上、この客の後に別の客が入ることは無い。
(もう二週間以上毎日薬を飲んでるからな、そろそろ休薬日を作っとくか)
休肝日ならぬ、休薬日。
自分で作った言葉を思い浮かべ、ルナは黒崎の顔を見た。
「いいよ、やる。予約の1時間前はフリーの客つけないでくださいね」
「当たり前だ。おまえも、最低限のルールは守れよ」
「……努力は、します」
精一杯の回答に黒崎はあからさまに息を吐いた。こればかりは約束はできない。
用件を終えると、奪い取られた読みかけの本は手元に戻ってきた。
「晩ご飯。俺、自分で買いに行けないからなんか買ってきてもらえます?」
「希望は?」
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