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彼らは今日、昆虫と陸上動物を探索する予定だ。
しかし、少年が余りにも昆虫に興味を示した為、一匹見付ける度に立ち止まり、随分と時間が掛かってしまった。
「やっとここまで来たか」
青年はため息を一つ付いた。
目の前には白黒模様の熊が笹を食べている。
「こんなに可愛いのに、人類は絶滅させたの?」
言いながらも少年の目線はその熊の方にくぎ付けだった。
「いや、まだ絶滅はしていない。けれどそいつらの命の源、笹の方がヤバくなってきてるんだよ」
「ふうん」
「さあ、次で最後だ、行くぞ」
最後に見る絶滅危惧種。
それは。
「僕たちに似てるね」
「ああ。しかし我々と違い、彼らは愚かだ」
そこにいるのは、自らを地上の覇者と勘違いし、汚染、戦争、環境破壊によって絶滅寸前に追いやられた「人類」だった。
と言っても、目の前にいるのは、身寄りもなく、飼い犬とともに命を落としたと思われている孤児や、親に見捨てられ生きるすべを無くした子供たち。
「彼らの場合、相変わらず食物連鎖の頂点と勘違いしていて、いわゆるお偉いさん方と言われる連中はまだ地上シェルターに残っているから、絶滅はしていない」
「僕たちみたいに地下に?」
「いや、連中は所詮地下数mの狭いところに身を潜めているだけだ。我々のように広大な敷地にいる訳ではないよ」
一通り肝心なエリアを見終わった。
青年は少年の目線まで体を屈めて、その頭を撫でた。
「明日は地上に出るんだから、今日はしっかり寝ておくように。分かったか?」
「うん」
地上の殆どは、放射能で汚染されている。
彼等の任務は、僅かに残った、汚染されてない地上の探索。
そこで、まだ現存している生物を保護する事だった。
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