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~古の民たちは、空を仰いでは天国を想い、うなだれて足元を見ては地獄を想ったのだろう。
でももし彼らに、現代人の様な知識があったなら、空気のない漆黒の宇宙に天国を見ただろうか。
丸い地球の反対側に、地獄を想っただろうか~
満月の夜。
青年と少年は地上への入り口に辿り着いた。
二人は地上に出ると、片膝を立てて跪き、上半身裸のままの、その真白な素肌を月明りに向けた。
地に居をかまえる蟻たちは、ある時期になると羽を生やし、新たな地を求めて旅たつ。
性質は全く違うのだが、彼らもまた地に住まうもの。
地上に出て、ある一定の期間だけ羽を生やして、宙を舞うのだ。
「せ、背中が、熱い、熱いよ」
「少しの間だから我慢しろ」
少年にとっては初めての体験だから、慣れないのも当たり前だった。
やがて二人の背中から大きな大きな翼が生えてきた。
「いいか、今日保護するのは、昨日見た絶滅種を除いた従来種だからな」
「う、うん。でも、上手く飛べるかな」
恐る恐る翼を動かす少年。
しかしその不安げなその瞳は、直ぐに昨日蛍を見た時のように輝きを増していった。
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